宝塚歌劇のフランス語②恋愛(エメ、ジュテーム、アムール、モナムール他)

前回の①慣用表現 編に引き続き、
「タカラヅカ外国語シリーズ」フランス語第2弾の恋愛編です。
宝塚の公演といえば恋愛要素はほぼ必須のような存在で、かつフランスを舞台にしたものも多いので、
きっと聞いたことのあるフランス語ばかりではないかなと思います!

恋愛に関するフランス語
aimer エメ ~を愛する
[ɛme]
有名なフランス語ですね。
「~を愛する」「~を好む」という動詞です。
『ロミオとジュリエット』にまさしく「エメ(Aimer)」という曲があります。
フランスが舞台なので、曲のタイトルや歌詞にたくさんフランス語が使われている作品ですね。
2021年 星組『ロミオとジュリエット』より「エメ(Aimer)」
(繰り返し再生する場合は 4:22~)
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Je t’aime
ジュ・テーム(ジュテーム)
愛してる
[ʒə tɛm]
あまりにも有名な「ジュテーム」です。
《je》(ジュ)は主語で「私は」を意味します。
後半の《aime》(エム)は、
前述の《aimer》(エメ)「~を愛する」が
主語の《je》(ジュ)に合わせて変化した形です。
(フランス語では、主語によって動詞の形が変化します)
間に挟まっている《t’》は、
「君を」「あなたを」を意味する《te》(トゥ)が短縮されたもの。
親しい間柄の人に対して使います。
2023年 雪組『ジュエル・ド・パリ!!』より「Jewel de Paris!!」
(繰り返し再生する場合は 5:05~)
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ちなみに:「とても」などで強調しようとすると、逆に愛の程度が弱まる?
フランス語で「とても」は《bien》(ビアン)、
「たくさん」は《beaucoup》(ボークー)。
どちらも《aimer》(エメ)「~を愛する、好む」と一緒に使えます。
しかしながら、例えば「君のことを とても/たくさん 愛している」と愛情を強調したくて
《Je t’aime bien》(ジュ・テーム・ビアン)とか
《Je t’aime beaucoup》(ジュ・テーム・ボークー)と表現してしまうと………
「(恋人や夫婦などの深い関係ではなく、友人として)大好きだよ♪」となり、逆に愛の程度が弱まってしまいます。
フランス語では《Je t’aime》(ジュ・テーム)というシンプルな形の方が、より真剣に愛情を伝える表現になるのが面白いところですね。
上記のように人物に対して「愛している、好き」と表現するときは要注意ですが、
物・事に対して「愛している、好き」と表現するときにはむしろ積極的に《bien》(ビアン)や《beaucoup》(ボークー)を付けます。
例えば《J’aime bien le sport》「スポーツが好き」とか、
《J’aime beaucoup les animaux》「動物が大好き」とか。
amour アムール 愛
[amuʁ]
おなじみ「アムール」です!
意味は「愛」。
定冠詞の《le》「ル」(英語でいう the )と合体して
《l’amour》「ラムール」と言ったりもします。
ちなみに:《amor》(アモール)はスペイン語で、《amore》(アモーレ)はイタリア語
宝塚では何気にスペイン語やイタリア語もよく出てきますよね。
フランス語・スペイン語・イタリア語(あとポルトガル語・ルーマニア語)は、
どれも古代ローマの「ラテン語」を起源として派生したので語彙や文法が非常に似通っています。
なお、スペイン語の《amor》(アモール)に
定冠詞がくっつくと《el amor》(エル・アモール)に、
イタリア語の《amore》(アモーレ)に
定冠詞がくっつくと《l’amore》(ラモーレ)になります。
…………ただでさえ似ているのにますますややこしいですよね。
スペイン語とイタリア語の記事も書く予定なので、よければそちらも読んでみてください!
mon amour モナムール 私の愛する人
[mɔ̃n‿amuʁ]
「私の」という意味の《mon》(モン)(英語でいう my )と
「愛」を意味する《amour》(アムール)が合わさると、
「私の愛する人」「愛しい人」という意味になります。
男女関係なく使える表現です。
※フランス語の語彙には性別がついているので、自分や相手の性別にそぐわない表現を使うと違和感が生じることがあります。
その点、こちらは使いやすくて便利な表現です!
2023年 星組『1789 -バスティーユの恋人たち-』より「サ・イラ・モナムール CA IRA MON AMOUR」
(繰り返し再生する場合は 4:47~)
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ちなみに:ロマンチックすぎるフランス語のレパートリー
フランス語で「愛する人」を表すレパートリーはたくさんあり、おそらく世界中の言語で群を抜いています。
「私の天使」「私の宝石」「私の太陽」「私のハート」と呼ぶのはまだ序の口。
「私の半分」などとちょっと重めに呼んでみたり、
「私のキャベツ」「私のウサギ」「私のヒヨコ」「私のノミ」とバラエティ豊かに呼んでみたり。
(ノミは虫の蚤です。まさかのノミ……?!)
フランス語では小さくて可愛いもの(?)が愛を表現するのによく使われるみたいですね。
調べると想像を超える量のレパートリーが出てきますし、
きっと今現在もどこかで「愛する人」を表す新たな表現が生み出されていることでしょう。
femme fatale
ファム・ファタル(ファム・ファタール)
運命の女性
[fam fatal]
《femme》(ファム)は「女性」を意味し、
《fatale》(ファタル)は「運命的な」を意味します。
ですので、直訳すると「運命の女性」ですが…
単なる恋愛相手としての意味ではありません。
《fatale》(ファタル)には「致命的な」とか「破滅や死を必然的にもたらす」というニュアンスがあるため、
《femme fatale》(ファム・ファタル) は「男性を破滅に導くような魅力をもった女性」を指します。
※蛇足ですが、より一般的な「運命」という意味のフランス語は《destin》(デスタン)ですね。英語でいう《destiny》(ディスティニー)です。
ちなみに:男性版は《homme fatal》(オム・ファタル)
《homme》(オム)は「男性」を意味します。
《fatal》(ファタル)は「運命」を表しますが、
よく見ると《femme fatale》(ファム・ファタル)で使われている《fatale》とは異なり、末尾の《e》がありません。
フランス語では男性形の単語の末尾に《e》をつけたものが女性形になることが多いです。
あとがき
いかがでしたでしょうか。
きっと聞いたことのあるフランス語ばかりだったのではないでしょうか。
私個人としては、この恋愛編ではフランス語のロマンチックなところを書けてとても楽しかったです!
どれも宝塚でよく出てくる表現だと思うので、今後どの作品で出てくるかチェックするのが楽しみです。
それと、多いとは思っていましたがロミジュリと1789それぞれで記事が書けそうなくらい、フランス語がたくさん出てくることに改めて驚きました。
ロミジュリや1789のようにフランスが舞台の作品などは、そのうち作品ごとに外国語を解説する記事を書こうかと思います。
(とは言えフランス語以外にも書きたい記事があるのでちょっといつになるかは分かりませんが…)

参考文献:
Larousse. Larousse.fr. Accessed August 18, 2025. https://www.larousse.fr/dictionnaires/francais/.
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