宝塚歌劇のスペイン語 #2 ―エル・クンバンチェロ歌詞解説 Part2

- エル・クンバンチェロの歌詞全文
- 歌詞の和訳
- 単語・文法の解説

タカラヅカ外国語シリーズ・スペイン語の第2弾です。
前回取り上げた「El Cumbanchero(エル・クンバンチェロ)」という有名なラテン音楽の歌詞について引き続き解説します。
Part1・2の記事でサビの歌詞の意味が分かるようになります。
意味を調べていて感じたのですが、この曲では「意味のある言葉」よりも「音の響き」や「リズム」が優先されている気がしますね。
外国語を解説する記事のリンクまとめ
エル・クンバンチェロ 歌詞解説
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太字部分が今回の解説ポイント
A cumba cumba cumba cumbanchero
クンバ、クンバ、クンバ──陽気なクンバンチェロ
A bongo bongo bongo bongocero
ボンゴ、ボンゴ、ボンゴ──ボンゴ奏者
Riquiti que va sonando el cumbanchero, bongocero que se va
リキティ、リキティと音を響かせ、陽気なクンバンチェロが行く
ボンゴを叩きながら行く
Bongocero que se va
ボンゴ奏者が行く
A cumba cumba cumba cumbanchero
クンバ、クンバ、クンバ──陽気なクンバンチェロ
A bongo bongo bongo bongocero
ボンゴ、ボンゴ、ボンゴ──ボンゴ奏者
Riquiti que va sonando el cumbanchero, bongocero que se va
リキティ、リキティと音を響かせ、陽気なクンバンチェロが行く
ボンゴを叩きながら行く
Bongocero que se va
ボンゴ奏者が行く
Y suena así el tambor ríquititi
太鼓はこんなふうに鳴る──リキティティ
bom bom bá
ボン、ボン、バ
y vuelve a repicar ríquititi
そして繰り返し打ち鳴らす──リキティティ
bom bom bá
ボン、ボン、バ
A cumba cumba cumba cumbanchero
クンバ、クンバ、クンバ──陽気なクンバンチェロ
A bongo bongo bongo bongocero
ボンゴ、ボンゴ、ボンゴ──ボンゴ奏者
Riquiti que va sonando el cumbanchero, bongocero que se va
リキティ、リキティと音を響かせ、陽気なクンバンチェロが行く
ボンゴを叩きながら行く
Bongocero que se va
ボンゴ奏者が行く
Riquiti que va sonando
リキティ・ケ・バ・ソナンド
鳴りゆくリキティ
[riˈkiti ˈke ˈβa soˈnando]
サビの途中に出てくる《Riquiti que va sonando》(リキティ・ケ・バ・ソナンド)は、直訳すると「鳴りゆくリキティ」です。
《riquiti》(リキティ)とは何ぞや?ですが、辞書に載っていなかったのでスペイン語話者へ訊いてみたところ、「マラカスを振った時に出る速くて陽気なリズムを連想させる擬音語」とのこと。
(エル・クンバンチェロの歌詞ではマラカスは登場せず、ボンゴ(太鼓の一種)のみ登場しますが楽器関係の擬音語なのでしょうか?)
《que》(ケ)は関係代名詞で、前半の《riquiti》(リキティ)を後半の《va sonando》(バ・ソナンド)が修飾するための、繋ぎの役割をしています。
後半の《va sonando》(バ・ソナンド)は「(音が)鳴っている」「(音が)聞こえる」という動詞が文法的に変化した形。
よって、これらをまとめると、
《Riquiti que va sonando》(リキティ・ケ・バ・ソナンド)は
「鳴りゆくリキティ(という音)」を意味することになります。
この曲では口語表現が結構出てきますね!
それだけ、その土地の文化を反映した音楽ということでしょうか。
また、個人的には関係代名詞の《que》(ケ)はあってもなくても意味が通じるかと思うので、歌詞として語呂を合わせるために入れられたような気もしますね。
台詞(せりふ)ユウなお、筆者は先日大阪万博へ足を運びまして、そのときに中南米のマラカスを実際に振る機会があったのですが
「確かにこの音はリキティと表現したくなるかも」という印象でした。
―《riquiti》(リキティ)のバリエーション―
「なるほどリキティは口語表現か~辞書では見つからなかったけどSNSでは出てくるかな?」と思いX(旧Twitter)で《riquiti》(リキティ)と検索すると、たくさん出てきました。
かなりバリエーション豊かに使われているので明確にこれだという意味を掴むのは難しかったのですが、思い思いの《riquiti》(リキティ)を見ることができてなかなか面白いです。
どうやら気分が高まってリズムに乗りたくなったときに使う…といった理解でだいたい良さそうです。
さらに、この《riquiti》(リキティ)の部分は歌い手によって歌詞が異なったりもします。
例えば《piquiti》(ピキティ)とか《priquiti》(プリキティ)と歌われたり。
いずれにせよ擬音語なので、意味を深く考えずノリで歌うのがよさそうです。
―《va sonando》(バ・ソナンド)を文法的に説明すると「ir動詞 + 現在分詞」―
(歌詞のニュアンスを理解するための上級者向けの内容です)
スペイン語でよく使われる文法表現に、「~していく」「だんだん〜する」意味を表す「ir動詞 + 現在分詞」というものがあります。
上述の《va sonando》(バ・ソナンド)も実はこれに該当しますが、一見そうは見えないですよね。
スペイン語では主語に合わせて動詞の形が変化するので、少し分かりづらいかもしれません。
《va sonando》(バ・ソナンド)の《va》(バ)は、
《ir》(イル)「行く」という動詞が変化したもの。
動詞の《ir》(イル)は、ほかの動詞と比べても原形をとどめていないレベルで変化するので分かりづらいですね。
《sonando》(ソナンド)は、
《sonar》(ソナール)「(音が)鳴る」「(音が)聞こえる」という動詞が現在分詞形へ変化したもの。
上記をまとめると、《va sonando》(バ・ソナンド)は
「~していく」「だんだん〜する」意味を表す「ir動詞 + 現在分詞」という文法表現だということが分かります。
よって、単に「鳴る」と訳すよりも「鳴りゆく」と訳すのが適切です。
el cumbanchero, bongocero que se va
エル・クンバンチェロ・ボンゴセロ・ケ・セ・バ
去りゆくお祭り騒ぎをする男・ボンゴ奏者
[el kumbanˈʧeɾo bonɡoˈθeɾo ˈke se ˈβa]
Part1でも取り上げた《el cumbanchero》(エル・クンバンチェロ)は「お祭り騒ぎをする男」、
《bongocero》(ボンゴセロ)は「ボンゴを演奏する男」ですね。
《que》(ケ)は前項と同じく関係代名詞で、前半の《el cumbanchero, bongocero》(エル・クンバンチェロ・ボンゴセロ)を後半の《se va》(セ・バ)が修飾するための、繋ぎの役割をしています。
《se va》(セ・バ)は「(その場から)去る」「(その場から)離れる」を意味する動詞の《irse》(イルセ)が主語に合わせて変化した形。
ここで重要なのが、動詞の《se va》(セ・バ)「(その場から)去る」「(その場から)離れる」の活用形が3人称単数形であるということです。
関係代名詞《que》(ケ)の前には《el cumbanchero》(エル・クンバンチェロ)「お祭り騒ぎをする男」と《bongocero》(ボンゴセロ)「ボンゴを演奏する男」という二人の男が並んでいますが、
動詞が単数形であることと、
《el cumbanchero, bongocero》(エル・クンバンチェロ・ボンゴセロ)がコンマ(,)で並んでいることから、
この二人の男は文法的に同格の扱いであると考えられ、
つまり《el cumbanchero》(エル・クンバンチェロ)「お祭り騒ぎをする男」と《bongocero》(ボンゴセロ)「ボンゴを演奏する男」は同一人物ということになります。
よって、これらをまとめると
《el cumbanchero, bongocero que se va》(エル・クンバンチェロ・ボンゴセロ・ケ・セ・バ)は「去りゆくお祭り騒ぎをする男・ボンゴ奏者 ※男は同一人物」を意味することになります。
ここで、「え、どうして去りゆくのか…?その男がいなくなってしまうではないか」と思われた方もいるかもしれません。(私も同じ感想を抱きました)
何せ80年ほど前の古い曲ということもあり(それとお国柄もあり?)歌詞の解説資料などが特に残っていないのですが、
意味を一通り調べた感じだとこの曲は音の響きやリズムの流れを楽しむような音楽だという印象を受けるので、深く考えずノリで楽しむのがよいと思われます。



直訳の「去りゆくお祭り騒ぎをする男・ボンゴ奏者」だと「去る」という動詞から別離・哀愁のニュアンスが漂いますが、
そうではなく曲全体の雰囲気を考慮すると
「楽器を演奏しながらずんずん進んでいく」「演奏しながら移動し続けているので結果観測者から距離が離れる(≒観測者視点だと男が去るように見える)」といったニュアンスではないかと考えます。
―スペイン語では《va》の発音は「ヴァ」ではなく「バ」でOK―
スペイン語では《b》の発音と《v》の発音は区別されていません。
どちらの音も、英語の《b》と同じように発音します。
あとがき
Part1・2で「El Cumbanchero(エル・クンバンチェロ)」のサビの歌詞を解説しました。
続くPart3では残りのAメロの歌詞を解説します。
繰り返しになりますが、この曲では「意味のある言葉」よりも「音の響き」や「リズム」が優先されている気がしますね。
意味を解説しておいて何ですが、リズムと音の流れを楽しめたらオッケー!といったノリの曲だと思います。


外国語を解説する記事のリンクまとめ
参考文献:
- “Diccionario de la lengua española.” Real Academia Española, n.d., https://dle.rae.es/. Accessed 11 Sept. 2025.
- “Diccionario de americanismos.” Asociación de Academias de la Lengua Española, n.d., https://www.asale.org/damer/. Accessed 11 Sept. 2025.
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