宝塚歌劇のスペイン語①歌詞(アパショナード、エルクンバンチェロ、ボンゴセロ)

「タカラヅカ外国語シリーズ」、スペイン語まとめの第1弾です!
宝塚の公演ではスペイン語の歌詞やセリフもたくさん出てきますよね。
第1弾では、タイトルにも書いてあるような「聞いたことがある歌詞だけど、一体どういう意味?」と思われるであろうスペイン語を取り上げていきます!

歌詞に出てくるスペイン語
apasionado/apasionada 
アパショナード/アパショナーダ 情熱の人、情熱的な
アパショナード 赤く赤く
アパショナード 燃えて燃えて
アパショナード 伝説のルビーより赤く
アパショナード 熱く熱く
アパショナード 燃えて燃えて
アパショナード 夜を抱く太陽より熱く
一夜の炎に身を委ねて 情熱の海を泳ぎたい
アパショナード
「Apasionado!!」より歌詞を一部抜粋
『Apasionado!!(アパショナード)』というショーや歌のタイトルにもなっていますね!
《apasionado》(アパショナード)は
名詞として「情熱の男」、
形容詞として「情熱的な」を表すことばです。
歌詞の中で何度も繰り返されていて、熱さがこれでもかというほど伝わってきますね!
実は男性に対して使うか、女性に対して使うかで綴りと発音が異なります。
apasionado 
アパショナード、アパシォナード
(男性形)
[apasjonaðo]
apasionada 
アパショナーダ、アパシォナーダ
(女性形)
[apasjonaða]
このように、スペイン語の単語には男性形/女性形の区別があります。
男性形の単語は《o》で終わることが多く、女性形の単語は《a》で終わることが多いです。
(ただし例外もあります。きっとほかの記事でそのうち出てくるので、そのときに解説しますね)
2016年 月組『Apasionado(アパショナード)!!Ⅲ』より「Apasionado!!」
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ちなみに:スペイン語の発音はローマ字読み・カタカナ発音でもほぼ通じる
数ある外国語の中で、スペイン語は日本語を話す私たちにとっては発音が簡単な言語かもしれません。
実はスペイン語の発音はローマ字読み・カタカナ発音でもかなりの高確率で意味が通じるんです。
その理由はスペイン語の母音が日本語の母音(アイウエオ)とほぼ同じであることと、子音もローマ字読みに近いことが挙げられます。
実際にスペイン語の母音《a, i, u, e, o》はこんな感じの発音。
(ウの音だけ少し特徴がありますが、全体的に日本語の発音に似てますね)
[a i w e o]
子音もほとんどがローマ字読みで通じます。
ただし子音は《h, j, ll, rr, v, y》のように一部ローマ字読みとは異なる発音もあるので、それらは今後の記事で出てきたときに解説します。
el cumbanchero 
エル・クンバンチェロ 
お祭り騒ぎをする男
[el kumbanˈʧeɾo]
「El Cumbanchero(エル・クンバンチェロ)」という有名なラテン音楽です!
1943年にプエルトリコ(中米のカリブ海に位置する島。スペイン語圏です)の作曲家によって作詞・作曲されました。
↓右下の「」マークから視聴できます
A cumba cumba cumba cumbanchero
(ア クンバ クンバ クンバ クンバンチェロ)
A bongo bongo bongo bongocero…(ア ボンゴ ボンゴ ボンゴ ボンゴセロ…)
Riquiti que va sonando(リキティ ケ バ ソナンド)
el cumbanchero, bongocero que se vá(エル クンバンチェロ ボンゴセロ ケ セ バ)
Bongocero que se vá…(ボンゴセロ ケ セ バ…)
「El Cumbanchero」より歌詞を一部抜粋
タイトルがそのまま歌詞にも出てきますね!
「お祭り騒ぎをする男」という意味です。
《el》(エル)は定冠詞(英語でいう the)です。
《cumbanchero》(クンバンチェロ)は、
中米(キューバ、メキシコ)の口語表現が元になった単語で、普通に辞書で検索しても出てきません。(難しい…!)
キューバやメキシコの口語表現で「お祭り騒ぎ」「酒宴」を表す《cumbancha》(クンバンチャ)と、
単語の後ろにくっついて「~をする男性」を表す《~ero》(~エロ)ということば(接尾辞)を組み合わせた単語です。
それで《el cumbanchero》(エル・クンバンチェロ)「お祭り騒ぎをする男」という意味になるんですね。
ちなみに、「お祭り騒ぎをする女」を表すなら
《la cumbanchera》(ラ・クンバンチェラ)となります。
(「~をする人」を表す接尾辞が、
女性形の《~era》(~エラ)「~をする女性」に変化するんですね)
ちなみに:スペイン語では定冠詞も性別に合わせて変化する
スペイン語では、定冠詞(英語でいう the)にも男性形と女性形があります。
男性形は《el》(エル)、
女性形は《la》(ラ)です。
ちょっと複雑ですが、それぞれ複数形もあります。
男性の複数形は《los》(ロス)、
女性の複数形は《las》(ラス)です。
実は、これらの定冠詞は地名にも使われているんです。
例えば、
中米の《El Salvador》(エルサルバドル)、
アメリカの《Los Ángeles》(ロサンゼルス)、
アメリカの《Las Vegas》(ラスベガス)など。
地名に限らず、定冠詞はこれからもたくさん出てくるかと思いますのでぜひチェックしてみてください!
ちなみに冒頭の《A cumba cumba cumba》(ア・クンバ・クンバ・クンバ)の部分ですが、
特に意味のある単語というわけではなく単にリズム感や熱気を表現するための擬音語だと考えられます。
この曲は音の響きやリズムの流れを楽しむような音楽で、擬音語が度々出てくるのが特徴的です。
bongocero 
ボンゴセロ 
ボンゴを演奏する男
[bonɡoˈθeɾo]
クンバンチェロときたら、お次はボンゴセロですよね!
意味は「ボンゴを演奏する男」。
ボンゴはラテン音楽(ざっくり中南米の音楽)で用いられる太鼓の一種です。
混同されがちですが、同様にラテン音楽で用いられる太鼓の一種で「コンガ」というものもあります。
▼サイズ感のイメージ。
 左が《bongo》(ボンゴ)です
※男性と女性のシルエットには一応意味があります

察しのいい方はきっとお気付きだと思いますが、
《bongocero》(ボンゴセロ)は
前項の《cumbanchero》(クンバンチェロ)と単語の構造が似ています。
太鼓の一種である《bongo》(ボンゴ)と、
単語の後ろにくっついて「~を扱う男性」を表す《~ero》(~エロ)ということば(接尾辞)を組み合わせた単語です。
それで《bongocero》(ボンゴセロ)「ボンゴを演奏する男」という意味になるんですね。
ちなみに、《bongo》(ボンゴ)は男性名詞で
《conga》(コンガ)は女性名詞です。
《o》で終わることが多い男性形の単語と、
《a》で終わることが多い女性形の単語の一例ですね!
画像の男女のシルエットはそういう意図です。
サイズ感がややこしくなる方、と覚えてみてください。(えぇ…)
ちなみに:《bongocero》(ボンゴセロ)の本来の綴りは《bongosero》(ボンゴセロ)
実は、歌詞に出てくる《bongocero》(ボンゴセロ)という単語は
基本的にスペイン語の辞書には載っていません。(クンバンチェロに引き続き難しい…!)
代わりに、《bongosero》(ボンゴセロ)なら載っています。
意味も「ボンゴを演奏する男」です。
なぜ綴りが違うのかというと、
スペイン本土のスペイン語と、ラテンアメリカ(中南米)のスペイン語の間には、
単語の発音に若干の違いがあるからです。
英語でも、アメリカ英語とイギリス英語とオーストラリア英語で、
発音とか綴りとか、そもそも使われる単語が異なったりしますよね。あんな感じです。
あとがき
いかがでしたでしょうか。
宝塚ではラテンショーなどもたくさんあるので、スペイン語をちょっと知っているとより楽しくなるのではないかと思います!
ラテン音楽の特徴はとにかく熱いところ!
軽快なリズムに乗せられた熱気あふれる歌詞を聞くと、つい音楽に身を任せたくなってしまいますね。
なお、「El Cumbanchero(エル・クンバンチェロ)」の歌詞についてはまだ解説しきれていない単語もあるのですが、
記事が長くなりすぎるので次の記事に回すことにします…!

参考文献:
- “Diccionario de la lengua española.” Real Academia Española, n.d., https://dle.rae.es/. Accessed 31 Aug. 2025.
- “Diccionario de americanismos.” Asociación de Academias de la Lengua Española, n.d., https://www.asale.org/damer/. Accessed 31 Aug. 2025.
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